大草原の小さな家 (Little House on the Prairie)

森のぽーさんと愉快な仲間たち

大草原の小さな家 (Little House on the Prairie)

テレビドラマのタイトルとなりました

テレビドラマのタイトルとして採用された同名の原作であります。「大きな森の小さな家」から続きということになりますが、実際にはこの2つの間に「農場の少年」という書が発行されています。この本は直接的にはテレビドラマシリーズには関係してきませんが、後にローラの旦那さんになるアルマンゾ・ジャイムズ・ワイルダーの少年期の話になっております。どちらを先に読んでもいいのですが、ここでは話の流れからして後に回したいと思います。

シリーズの原作はどれを読んでも面白いのですが、私の心を一番揺るがしたのはこの本ですね。新天地西部のインディアンテリトリーを目指して幌馬車にのり旅する話でありますが、ドラマではこのタイトルだけを採用して、内容は省略されているようです。確かに原作とドラマは違っていいのですが、アウトドアファンの私にはどうにも納得できない部分であります。

「大きな森の小さな家」からインガルス一家4人と一匹は新天地を求めて幌馬車に乗って西部を目指して約1年間の旅に出ます。テレビドラマのタイトルとなった原作でありますが、ドラマでは相当部分割愛されているようであります。アウトドア大好き人間の私には胸ワクワクするところであります。本物の幌馬車などは見たことはありませんが、映画や挿絵で見る限りにおいてはかなり大きなものだということがわかります。車中泊で旅をすることを趣味としている私にとってはとても興味のあるところであります。文中からわかることは馬2頭立てのようです。2馬力であります。車輪はゴムのタイヤではなさそうなので乗り心地はかなり悪そうであります。スプリングはついているのかかなり興味のあるところであります。また幌の防水性はあるのかないのか。1年間家族4人と犬1匹が旅して歩くわけでありますから旅の費用はいかほどで、どこから出たのかということも気になるところであります。

現代と違ってのんびりとした旅行だったのだと思います。ただ馬というのはかなり便利な動力源ではありますね。だってガソリンを入れる必要がないのです。水をやり、その辺りに生えている草を食べさせておけば済むわけでありますから究極のエコといってもいいでしょうね。

本書目次

英文で読む Little House on the Prairie

Contents

Going West

 A long time ago,When all the grandfathers and grandmothers of today were little boys and little girls or very small babies, or perhaps not even born, Pa and Ma and Mary and Laura and Baby Carrie left their little house in the Big Woods of Wisconsin. They drove away and left it lonly and empty in the cleaning amoong the big trees, and they never saw that little house again

 They were going to the Indian country.

 Pa said there were going too many people in the Big Woods now.Quite often Laura heard the ringing thud of an ax which was not Pa7s ax whuchwas not Pa's ax,or the echo of a shot

西部への旅

 むかしむかし、今のおじいさんおばあさんが、まだ小さな子どもだったり、赤ちゃんだったり、もしかすると、まだ生まれてもいなかったころでした。とうさんとかあさんとメアリーとローラ、そして赤ちゃんのキャリーは、ウィスコンシン州の「大きな森」にあった小さな家をあとにしました。高い木立の間の、切り開いた土地に、ひっそりと、住む人もないままおいてきぼりにしました。その小さな家を、馬車で旅立った日から、誰も二度と見ることがありませんでした。

 ローラたちは、インディアンの住む土地へいくのです。

 とうさんがいうのには、いまではこの「大きな森」に住んでいる人が多すぎるのだそうです。ローラも、よく、とうさんの斧とはちがう、キンキンひびく斧の音をきいたり、とうさんの鉄砲では銃声がこだまするのをききました。小さな家の前をとおっていた小道は、もう広い道になってしまいました。ほとんど毎日、ローラとメアリイは、あそぶのをやめて、その道を車輪をきしませながら、ゆっくりとおっていく馬車を、目をまるくしてながめるのでした。

 野生の動物は、こんなにおおぜい人間がいる土地には、住まなくなるのです。とうさんも、やはり、住みたくないのです。とうさんは、野生の動物が、あんしんして住んでいられる土地がすきなのでした。暗い森かげからのぞいている子ジカやかあさんジカや、野イチゴのしげみでイチゴを食べている、ふとったものぐさなクマをみ見るのが、とうさんはすきなのです。

 冬の夜長に、とうさんは、西部の国のことを、かあさんに話していました。西部では、土地がたいらで、木がなく、草は、たけ高くのび、よくしげるのです。そこでは、野生の動物たちは、果てまで見えないほど広い牧場にでもいるように、自由に歩きまわり、食べたいだけ食べられるのです。そのうえ、まだそこに住みついてアメリカ人はいないのです。インディアンだけが、住んでいる所なのです。

 冬もおわりのころのある日、とうさんは、かあさんにいいました。「かあさんが反対しないのがわかったから、西部を見にいくことにきめたよ。ここの買い手がついたし、いま売れば、けっこういい値だんになる。あたらしい土地での暮らしをはじめるのにも、じゅうぶんなものが手にはいる」
「まあ、チャールズ、もう出発しなけりゃならないんですか」かあさんはいいました。まだまだ寒さはきびしく、このあたたかい家は、とてもいごこちがいいのです。
「ことしいくつもりなら、いますぐ出発しなければ」とうさんはいうのです。「氷が割れてからでは、ミシシッピイ河はわたれないからね」

 というわけで、とうさんは家を売りました。牝牛も子牛も売ったのです。ヒッコリイの枝が弓形にまげて、幌を張る枠を何本もつくり、馬車の荷台にしっかりむすびつけて、かあさんも手つだって、白い麻の幌を、その上にかけました。

 朝まだうす暗いうちに、かあさんは、メアリーとローラをやさしくゆり起こします。暖炉の火とロウソクのあかりで、かあさんはふたりの顔や手をあらい、髪もとかし、寒くないように身じたくをさせました。長い赤いネルの下着の上に、毛のペチコートを着せ、毛の服を着せ、毛の靴下をはかせます。その上に外套を着せると、ウサギの毛皮でつくったフードをかぶせ、赤い毛糸あみのミトンをはめさせました。


 カンザスという所は、どこまでもつづく、山も谷もないたいらな土地で、たけの高い草が一面にはえ、風にそよいでいました。何日も何日も、一行はカンザスの旅をつづけ、見えるものは風に波立つ草と、とてつもなく大きな空ばかりでした。このとほうもなく広い平地では、地平線はまるくカーブをえがいて見え、四方を見まわすと、まわりじゅう空にかこまれたまるい輪のまんまんなかに、馬車がいるように思えるのでした。

 一日じゅう、ペットとパディが、足をはやめたり、ゆるめたり、またはやめたりして、前へ前へとすすんでいくのに、いつまでも、この輪のまんなかから一歩もでられないのでした。太陽がしずんでもまだ、この輪は馬車のまわりをかこんでいて、そのまるい地平線のあたりがうす赤くなっています。やがて、少しずつ、地面が黒ずんできました。草を吹く風が、さびしい音をたてます。キャンプの火も、このとほうもない広さのなかでは、とてもちっぽけで、たよりなげです。でも、空にかかった星は、ローラが手をのばせばすぐにとどきそうなほど近く、キラキラかがやいていました。

 つぎの日も、おなじ地面、おなじ空、そして、地平線はあいかわらずまんまるでした。ローラとメアリーは、そのどれにもあきあきしていました。することは何もかも前の日とおなじで、見るものも何ひとつかわらないのです。馬車のうしろのベッドをととのえて、灰色の毛布をきちんとかけ、その上にローラとメアリーはすわるのです。馬車にかけた幌の両がわはまきあげてしっかりむすびつけ、草原をわたってくる風が吹き込むようにしてあります。風は、ローラのまっすぐな茶色の髪と、メアリーの金色のまき毛を、四方八方に吹き飛ばし、つよい日ざしは、まぶたに痛いほどでした。

 ときどき、大きな野ウサギが、風にうねっている草の上を、ぴょん、ぴょん、大きくはねて逃げていきました。ブルドックのジャックは、でも、ふりむきもしません。かわいそうに、ジャックもつかれていたのです。それに、こんなに長く旅をしたので、足がいたいのです。馬車はガタゴト動きつづけ、幌の屋根は、風にバタバタ鳴っていました。二本の車輪のあとが、馬車のうしろにかすかに残っています。いつもおなじように。

 とうさんの背中は、まるくかがまっていました。手にもった手綱はたるんだままで、長い茶色のひげが風に吹きまくられています。かあさんは、手をひざにくんで、きちんと背をのばしたまま、しずかにすわっています。キャリーは、服や毛布の包みの間につくった寝場所で、おとなしく寝ていました。

「アーア!」メアリーがあくびをし、ローラはいいました。「かあさん、馬車からおりて、馬車のあとについてかけたいの。足がだるいんだもの」

「いけませんよ、ローラ」かあさんはいいました。
「もうすぐキャンプするんじゃないの?」ローラは、またききます。馬車のかげのきれいな草の上にすわって、昼ごはんを食べてから、とても長い時間がたったような気がするのです。

 とうさんが返事をしました。「まだだよ。キャンプをするには、まだ早すぎるんだ」
「いますぐ、キャンプしたいのよ。とってもくたびれたんだもの」ローラはいいます。

 するとかあさんがいいました。「ローラ」たったそれだけ。でも、それは、ローラわがままいってはいけません、ということだったのです。ですから、ローラも、それきり、口にだしては何もいいませんでしたが、すなおな気持ちにはなれませんでした。じっとすわったまま、いろいろなことに腹をたてつづけています。

 足はいたくてたまらないし、風はあいかわらず髪の毛をめちゃくちゃに吹きまくります。草は波うち、馬車はガタガタ動き、長い長い間、あたりの景色も、ちっともかわりはしませんでした。

「クリークか川があるようだ」とうさんがいいました。「おまえたち、むこうの木立が見えるかい?」
ローラは立ちあがって、弓形の幌枠につかまって背伸びをしました。ずうっとむこうに、ひくい黒っぽいしみみたいなものが見えます。
「あれが木立だよ」とうさんはいいます。「影のかたちでわかるんだ。この土地では、木があるってことは水があることだよ。今夜はあそこでキャンプをしよう」